2025.12.06

クラブ 担当:万徳

3年連続金賞への道 後編 「赤(レッド)と金(ゴールド)」

肌寒い冬の朝です。
太陽はまだ顔を出していません。
朝6時30分からホテルの朝食なので、6時20分には朝食会場には集合です。
5分前集合完了は、本校の生徒なら当然ですね。
髪もばっちりセットされていました。みんな5時前には起きて準備しました。大会出場者指定のホテルなので、朝食会場は大会関係者ばかりです。
朝食は、ビュッフェ形式でした。生徒は、1名を除いて、主食はお米を食べていました(副部長の但馬さんはパンも食べていました。)。話を聞くと、普段、朝食はパンでも、本番前はお米を食べるという生徒もいました。さすが日本人です。ただ、本番が近いので、口がベトつくので、納豆は、今朝は食べないそうです(顧問を除いて)。
福田部長と但馬副部長は朝からたくさん食べています。緊張感から、本番の日の朝食を少ししか食べられない生徒も過去にいました。2人とも、そんなことはありません。頼もしい限りです。

朝食後、7時30分から、毎年お馴染みの、千葉ロッテマリーンズの本拠地、ZOZOマリンスタジアムの横の空き地で9時15分まで練習をしました。やはり、早朝の屋外は寒いです。
昨年と同じように、中学校のマラソン大会も今日あるので、中学生も大会準備やウォームアップをしています。
その後はホテルに戻り、メイクを整えて衣装に着替えました。広島始発の6時の新幹線で駆けつけてくださった衣装制作の岡本さんや、2年生・成瀬さんのお母さんが、髪飾りをつけてくださいました。
準備が整い、会場に出発します。
リハーサル会場では、最後のリハーサルをしました。
あっという間に本番前となりました。
なんと、今回の出場の順番は、高校部門48校出場校のトップ、1番です。
1番というのは、前の団体の様子を見てイメージを思い浮かべることができません。自分たちの演技が基準点となります。有利な順番とは決して言えません。

本番の直前、福田部長が気合を入れます。
「今までやってきたことを信じて、楽しく演技しよう。」
今回の演目は「カルメン」。情熱的な演目です。
衣装はそれを反映した情熱の赤(レッド)です。
観客席の応援に来てくださったお母さん方も、真っ赤な服装です。
赤色は広島東洋カープのチームカラーです。広島で赤い服は見慣れています。しかし、千葉ロッテマリーンズのチームカラーは黒と白。赤い服は、千葉ではとても目立ちます。会場でも一番目立ち、一目で本校の応援団だと分かります。保護者も生徒と一緒に戦っています。
「協創、ファイトー!」
広い会場に、応援団の声が響き渡ります。
いざ、本番。
•••与えられた5分の時間は、あっという間に終わりました。
本番では、華麗な演技を堂々と行うことができました。とても良かったと思います。
袖にはけ、会場に向かって、礼をします。
「どうもありがとうございました。」
その0.1秒後、号泣です。
「すみませんでした。」
バトンを落とした生徒が4名、泣いています。
慰めている生徒も一緒に泣いています。
しばらくその場から動けませんでした。
しかし、次の団体が演技をするので、控え室になんとか移動しました。
控え室でコーチが、
「なんで謝るの。今まで一生懸命練習をやってきたのは私もよくわかっています。本番でバトンを落とすのはしょうがない。誰も謝って欲しいとは思っていません。このことを次に活かし、改善すれば良いことです。みんな、よく頑張りました。」
その後、涙顔をなんとか笑顔に変え、大会公式の写真撮影をしました。
そして、会場外で待っている保護者やOGにお礼のあいさつに行きました。
生徒全員が、号泣。
昨年も、同じ光景を見たような気がします。
しかし、今年の方が慟哭のスケールが違います。10倍は違います。
昨年は高校3年生はいませんでした。今年は4名が高校3年生です。最後の全国大会ということもあるのでしょう。
子供達の泣き顔を見て、お母さん方も全員泣きだしました。幼稚園や小学校からの馴染みの子ども達なのもあるのでしょうか。我が子でなくても、抱き合って泣いています。
かなりの長い時間泣いていました。
もちろん、一番泣いているのは、福田部長のお母さんです。
その後、大会の看板の前で、なんとか笑顔をつくり、記念撮影をして、会場に戻り、他校の演技をすべて見て、審査結果を待ちました。
演技順に、金賞はゴールド、銀賞はシルバー、銅賞はブロンズと放送されます。
本校は、一番に呼ばれます。
「広島修道大学ひろしま協創高等学校バトン部••••••ゴールド」
「キャー」という悲鳴と同時に全員また号泣です。
4名はバトンを落としましたが、難易度の高い技が豊富に入っている演技自体はとても良かったので、そこが評価されて3年連続の金賞が取れたと思います。

その後、ホテルに戻り、オリンピックの金メダリストの様に、金メダルの代わりに金貨チョコレートを噛んだ写真を、ホテルのクリスマスツリーの前で撮影し、部屋に戻って、反省会を行いました。
そこでは、それぞれ反省点や感想などを発表しました。
高校3年生は、小さい頃からずっと一緒にやってきたメンバー(さらに、4名とも本校中学出身)との最後の大会なので、色々な感想がありました
大きな大会でも緊張しない、ハートの強い、どんな技でもできる、頼りになる清水副部長、いつも冷静に難易度の高い演技をサラッとやってのける平尾さん、バトン部のブレイン、但馬副部長、そして本校バトン部の顔、福田部長が思いを語りました。

但馬副部長は、昨年度の全国大会で本当は引退するつもりだったけど、自分の演技に納得がいかなかったので、受験があるのに、本年度も出場を決めたそうです。そして、演技後、生まれて初めて心から楽しく演技ができたということ語ってくれました。

福田部長は、「私は、ちゃんとした人間じゃない。中学から本校に入学したのは、バトン部に入ったら、簡単に全国大会に行けると思ったらからです。でも入ってみたら、とんでもない。練習がすごく厳しくて大変でした。そして、私なんかが部長になってしまいました。人の気持ちなんて全く考えたこともなかった自分が、考えるようになりました。協創に入って、体も成長しましたが、心は何十倍も成長しました。将来は、バトンの指導者になりたいです。そのため、ちゃんと卒業したいです。」
最後は笑いで締めました(顧問だけは笑えませんでしたが•••。)。
みんな、福田部長の努力を知っています。
全国大会のプレッシャーと部長のプレッシャーで教室で時々泣いていたことも顧問は担任の先生から聞いていました。
手帳に練習メニュー•練習計画•改善点など細かい字でびっしりいつも書いていることも顧問は知っています(手帳が体育館に何回か忘れてあって、バトン部の人の忘れ物みたいですと、顧問のところに何回か届けてくださった方がいたので。自分の持ち物には名前を書きましょう。)。
どこかの歌詞にあったように、流した涙の数だけ、悩んで眠れなかった日数分だけ、強くなり、成長したのではないのでしょうか。
その部長を、高校3年生全員がしっかりとサポートして、みんなで部活を引っ張っていってくれました。とても感謝しています。どうもありがとうございました。
最後に、小さい頃から知っているこの仲間と一緒に演技をするのが最後なのはとても残念です。もっとしたいですという発言がありました。
「留年したらできるよ。」
誰かが言いました。また、爆笑です(顧問だけは、また笑えませんでしたが•••。)。
今までの、失敗を含めた多くの経験は、次のステージでの力となることでしょう。
新たな目標に向かって、しっかり頑張ってください。応援しています。
月曜日は、2学期期末試験返却日です。試験の点でもゴールド級の点が採れていたら良いですね。レッドの点を採って号泣なんかしないでくださいね。